極東ロシア・カムチャッカで持続可能な漁業が着実に発展

アラスカからベーリング海を挟んだ先に位置するカムチャッカ半島。そこには厳しい自然環境が生み出す美しさが存在する。

雄大な手つかずの大自然や30を超える活火山、数多くの間欠泉地帯そして無数の美しい河川が存在する、ロシア・カムチャッカ半島。世界中から多くの観光客や釣り人そしてハンターなどが訪れます。常駐人口は非常に少なく半島というよりは島に似た雰囲気があります。

この地域の主要産業はサケ漁業です。カムチャッカのサケ漁の漁期は通常6月下旬からわずか数か月間のみですが、この短い期間に漁獲量はおよそ140,000トンに達します。 実はよく日本でも食されているカムチャッカ産のサケ。多くは日本や韓国そして中国に輸出され販売され一部加工されます。その後アメリカやカナダのバイヤーなどが購入し、世界中で販売されレストランやホテルおよびホール・フーズのような小売店を通じて消費者に届きます。

Russian sockeye salmon advertised at a Whole Foods Market ホール・フーズで宣伝されたロシア産紅鮭

オーシャン・アウトカムズは西カムチャッカサケ漁業改善プロジェクト (FIP)を発足し、2014年には漁業の持続可能性を計る審査を行いました。プロジェクト発足以前よりこの地域ではワイルドサーモンセンターが手掛けるプログラムとして主要な漁業会社とFIPに取り組んで結果、オゼルナヤ川の紅鮭漁業の認証取得に導くことができました。そのような活動を通じた関係が現在の活動の礎になっています。


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2014年の審査は非常に重要な第一歩となりました。理由は持続可能性に関した活動を実施する上で大きな弊害となる一貫したデータの欠如が露呈されたからです。ただそこには歴史的な背景がありました。カムチャッカのサケ漁業における環境的な健全性はソビエト時代には詳細にモニタリングされていましたが、ソ連崩壊後資金源を失った環境科学界はデータ量を減少せざるを得ませんでした。

FIPを通じて本対象漁業が全体としてよく管理されていることが確認さた一方、懸念する箇所も数々ありましたが、改善内容や規模を知る上で非常に重要な目安となりました。特に課題として特定されたことは漁業のサケ遡上量目標の欠如そして違法漁業の2点でした。

まさに“脱出 (Escapement)”という言葉通り、人間や野生捕食動物に漁獲されずに上流の産卵床までたどり着くサケの数を表します。遡上量が目標以下になると、漁獲されるサケの数を補うのに十分な量のサケが産卵のために遡上できなくなることから、持続可能性のリスクになります。審査の結果、遡上量目標の改善のための管理強化を優先事項とする必要性が明らかになりました。漁業全体のデータに懸念はなかったものの、河川ごとの遡上量目標に関するデータが揃っていないことがしばしばありました。サケは生まれた河川に戻って産卵するため、資源量も河川ごとに異なるので、河川ごとの遡上量に留意することが漁業全体の持続可能性を担保するために不可欠でした。

密漁問題は全く異なる経緯をたどる

遠隔地にあるため密漁による多大な影響から逃れている河川もありましたが、多くのサケ系群が違法漁業による打撃を受けていました。違法漁業には、漁期以外の操業、未認可の漁具の使用および産卵床でメスの腹を裂いてイクラを取り出す密漁集団まで多岐にわたっていました。

これらの問題に対するアプローチは漁業会社や流通企業とパートナーを組み対策や解決策を共に模索するなどFIPの特徴性を活かしています。西カムチャッカ半島サケFIPにおいては、地域の主要な2つのパートナー企業と継続的に協働しました。ヴィタズ・アブト社とデルタ社は、カムチャッカサケの年間漁獲量の大部分を占める代表的なブランドになっています。

河川ごとの遡上量目標設定はより複雑な作業でしたが、両社にはこの変更の重要性に対する理解が得られていました。両社はそれぞれ特定の河川で漁をしていましたが、地域全体の遡上量情報だけでは、各社の長期的なサケ供給の実現性を把握することができなかったからです。FIPを通じて河川ごとのデータをしっかり取ることが事業の利益に繋がることが明確になりました。ヴィタズ・アブト社とデルタ社は共にFIPに取り組み、カムチャットNIRO(地域の研究機関)に対してサケの遡上量を河川ごとに評価するよう求めました。そしてその評価により、カムチャッカで初めてのシロザケやカラフトマスおよびギンザケの河川ごとの遡上量目標が設定されました。

この重要な取り組みが実施されたことにより、FIPおよび漁業会社は効果的にこれらの目標に対する進捗を確認できるようになりました。現在は目標達成が必要な場合、サケを上流に遡上させる日数を定期的に増やすなど取り組んでいます。(サケの漁期中遡上量を改善するためにサケを上流に移動させる措置)。このような措置を含めた改善により本漁業は各河川での取り組みがどのように漁業全体の目標達成につながるかを明確にイメージできるようになりました。

本漁業の審査では、漁業者および密漁者による違法漁業の懸念すべき証拠が明らかになりました。腐りかけの魚の死骸、捨てられた大量のイクラや違法な中国製の刺し網。FIPの漁業会社のパートナーにとって、これらは非常に厄介で懸念すべきテーマでした。しかし、私たちは漁業パートナーとの信頼関係を通じて、FIPの参加者は最初から保身に走ったり責任追及するのではなく、協調的な密漁防止の取り組みについて真剣に議論を始めました。ヴィタズ・アブト社とデルタ社は共同で地域の反密漁団体を組織し、資金を提供し立ち上げました。これらのパトロール活動は今やカムチャッカ半島の西海岸ではよくある光景になっています。パトロールでは、カムチャッカ半島の川の上流から下流まで密漁活動が行われていないかくまなく捜索しています。今日では、FIPにおけるこのような取り組みにより望ましい結果が出ています。密漁がさらに困難になり以前に比べて減少しています。

Russian Anti IUU Poaching Efforts in the Russian Far East 密猟者が川に設置したフェンスを撤去する反密漁組織

遡上量目標や密漁およびほかの優先事項に取り組む努力は独立したオブザーバーによってさらに強化されています。FIPではヴィタズ・アブト社およびデルタ社との効果的な活動協力関係が確立されているので、独立オブザーバーは両社とともに現場に出て漁業の操業を定期的に観察しています。また両社とも事業が垂直統合されているので、このような関係を通じて独立オブザーバーが両社の加工施設に入ることができ、漁獲後の持続可能性に関する取り組みの進捗状況も評価することができます。オブザーバーはまた観察した内容を記録し、データを入力することによりトレーサビリティー確保やIUU漁業抑制にも貢献しています。

独立オブザーバーは警察ではありませんが、常に監視し、メモを取り、質問しています。彼らは日々の操業に使われる漁具、非対象種の扱いおよびほかの様々な問題について質問するようです。またFIPでは業界との生産的な関係を構築しその維持に力を入れているので、このような質問に対しても問題なく解答できるようにしています。

何を一番誇りに思うか問われれば、人と答えるだろう。

FIPで最も緊密な業界との関係は企業の経営者たちとの関係ですが、彼らは通常は川や加工施設で現場作業者と作業を共にしています。彼らのようなプロは常にフルスピードで日々を過ごしています。複数の仕事をこなし、絶えず様々な状況で必要とされています。さらに私たちは彼らが毎日持続可能性に対して真摯に取り組んでいる様子を見ていますし、家族の生活の将来の糧を守るためより多くの複雑な仕事に進んで取り組んでいます。「私たちはあなた方が誰なのかは気にしていません。」と経営者の一人が言っていたのを思い出します。「皆さんが魚を守るためにここに来ているのは分かるから私たちの味方だと考えていますし、私たちがもっと良い仕事ができるよう支援してくれているのも理解できます。」

彼らは実際により良い仕事をしていますし、本物の成果を出しています。カムチャッカのサケ漁業は最近海洋管理協議会(MSC)により認証を受けました。オブザーバーは違法漁業が劇的に減少したと報告しています。またMSCはこの漁業を認証する一方で、より厳しい法律の執行とトレーサビリティーの改善についても言及しました。MSCは遡上率のモニタリングをさらに進めていく必要性についても指摘していますが、本認証は意味のある進展があることを示す重要な指標になっています。

西カムチャッカサケFIPは、漁業者が漁業に真の変化をもたらせる効果的なパートナーになりうることを示しています。業界が真の変化をもたらすためには話し合いに参加しなければなりません。また本FIPは業界がより持続可能な漁業になることは事業的にも利益があることを示しています。

ヴィタズ・アブト社とデルタ社の技術主任であるアンドレイ・ボコブ氏は、「持続可能性は世界中に広がり大きな減少になっています。」と語っています。「さらに多くの水産会社は新たな持続可能な水産物を探しており、ロシアはそのような需要に応えることができます。」

もし対話が進み、漁業会社が共通の利益を特定し、その目標に向かって取り組むための効果的な業務関係を作ることができれば、漁業改善プロジェクトを通じて真に意味のある持続可能性の改善を達成することができます。


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