極東ロシアにおける密漁撲滅に向けて

北東サハリン島カラフトマス漁業 ~ロシアにおける持続可能な漁業の推進に向けた戦い~

サハリン島は北太平洋とオホーツク海に囲まれ、その海域は地球上で最も豊かな海の一つとされています。冷たく澄み切った栄養豊富な湧昇流は、地球上で最も生産性の高い沿岸サケ漁業を育む環境をサハリン島周辺にもたらしています。この地域のカラフトマスは主に沿岸定置網漁、やな漁、地曳網漁で漁獲されます。漁期は盛夏からから初秋にかけてで、漁獲されたカラフトマスの大半はロシアで販売されますが、近年では米国やEUの市場関係者からの注目度が上がっています。

極東ロシアの他地域と同様、サハリン島においては密漁が大きな問題となっています。密漁を生業とするグループは短い夏季漁期に河川上流域において違法採捕をおこなっています。密漁者は違法な刺網を用いて子持ちメスのイクラを狙った密漁をおこないます。大抵の場合、彼らは河川全幅を刺網で遮り、カラフトマスの遡上を完全に妨害してしまいます。

北東サハリン島カラフトマス漁業では緊急の対策が必要とされていました。

密漁が横行する持続可能な漁業とかけ離れた状況に、漁業者グループ、科学者、保護活動家、地域コミュニティのリーダー達が団結し、カラフトマス漁業の健全化に向けた改革を志す者の協力グループが結成されました。このグループでは、違法な漁業と戦うための組織レベルの戦略が検討されました。

手始めに地元の漁業会社6社が協力し、民間の密漁監視団に共同で出資をおこないました。これら民間密漁監視団は河川の主要アクセスポイントでの活動を管理し、地域の主要河川のパトロール、密漁用漁具の差し押さえ、河川内障害物の除去、地元管理当局への違法行為の報告を担いました。その結果、これら地域における密漁は急激に減少しました。

一方で、ロシアにおける保護活動組織であるSakahalin Environment Watch (SEW)とMascow-based Transparent Worldの2団体は、商業定置網漁業の順法性を調査するために、革新的な衛星モニタリングプログラムを共同で行いました。サハリン島沿岸では、毎年400系統以上もの商業定置網が設置されます。本プログラムでは、これら定置網の大規模な漁具サイズと定着性という特徴から、衛星から監視をおこなうことが可能となりました。O2のパートナーである2つの団体は、GISマッピングの技術を用いて衛星画像に定置網の敷設許可範囲を投影することで、違反操業の有無を評価しました。その結果、多数の違反行為が白日の下にさらされました(A:許可範囲外での定置網の敷設、B:違法な敷設形状、C:採捕禁止河川への過剰な近接、D:敷設面積の超過)。本プロジェクトの効果は目覚ましく、違法行為は60%以上も減少しました。

Photos of net infractions

IUU(Illegal, Unreported, Unregulated)漁業を減少させた北東サハリン島のカラフトマス漁業は、O2スタッフによる技術支援も手伝って、北東サハリン島カラフトマス漁業としてMSC認証を受けました。このことは、当該漁業における持続可能性の証明、さらに地元漁業会社が取り扱う製品の付加価値向上がもたらされ、結果として新規ビジネスネットワークも構築されました。

河川内での密漁の減少とそれに伴う商業漁業における説明責任の増加によって、北東サハリンにおけるカラフトマスの回帰率はプロジェクトによって劇的に増加し、現在でも安定したレベルに落ち着いています。この事は、近年、カラフトマスの回帰率が大幅に減少したサハリンの他地域と対照的な状況となっています。

プロジェクトは現在も進行中ですが、北東サハリン島カラフトマス漁業における成功事例は、持続的な漁業を推進する事によって環境にもたらされる恩恵だけに留まらず、経済的利益の両方をプロジェクトの利害関係者にもたらすことができる事を証明しています。


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