持続可能な水産物の第一人者ディック・ジョーンズ氏インタビュー
漁業改善の状況、現在の動向および漁業改善の取り組みの意義について教えてください。

持続可能な水産物に関する運動はまだ日が浅く、北米で多くの成功事例が出てくるようになったのはここ10年ほどの間です。また、重要な地域における現場での成功事例は、ようやくここ5年ほどの間に出始めたばかりです。私たちが直面する問題は、最近の潮流というよりは、日常的な現実世界の問題です。例えば、不買運動や制裁、貿易障壁などの政治問題や、海外NGOに対する政府の反感、またはウクライナ問題などの地域戦争でさえも、多くの重要な漁業地域における改善の取り組みに深刻な影響を与えかねません。漁業改善を実施する組織は、これらの問題に取り組むうえでこのような避けられない環境の変化を考慮し、柔軟に適応していくことが求められます。

漁業改善の取り組みを求める動機は何ですか?またこの要求は今度どのように変わっていきますか?

漁業改善の取り組みを求める声は、主に審査や格付けの結果をもとに調達の決定を下す西洋(北米およびEU北部)の水産物バイヤーから上がっています。また、北米や西欧のほぼ全ての水産物小売大手は、持続可能な水産物に関する公約を掲げています。一方で、従来から人手が足りず複雑な問題を抱える格付決定機関は、水産物のサプライチェーンにとって重要な新しい漁業審査を実施する必要があり、すでに審査を受けた漁業も、資源評価スケジュールに合わせて1-4年ごとに更新が必要です。バイヤーサイドからのこのような要求は短中期的には継続または増加しますが、それと並行して、漁業者の間でも資源のより良い管理への関心が高まっているので、常にバイヤーが漁業改善を求めるようになれば、漁業者の関心も高まってくるでしょう。

さらに、水産物バイヤーおよびNGO両者から短期の漁業審査を求める声が上がっています。通常短期審査は調達決定のためではなく、漁業に関する入手可能な情報を評価し、より厳しい審査を受けるコストを見極めるために実施されますが、概して調達決定にもつながっていきます。モンテレー・ベイ水族館のシーフード・ウォッチ・プログラム、サステイナブル・フィッシャリーズ・パートナーシップなどのNGOや、漁業の格付けを包括的なデータをもとに判断する他の機関は、よりしっかりした厳格な審査を必要としていますが、短期審査も前段階として推奨しています。この場合、正式な漁業審査というよりはリスク評価になります。

漁業改善に取り組むべき優先地域はどこですか?またその理由は?

全てを網羅しているわけではありませんが、現在の優先地域は、東南アジアや、アフリカ、南米の開発途上国および水産物の主要な生産者や消費者である日本やロシアなどの国々です。こういった地域は排他的経済水域において水産物の持続可能性に問題を抱えており、文化的にも現地の水産物の消費に依存しています。水産物の需要は今後数年の間は横ばいですが、持続可能な水産物の需要は高まり続けます。逆に、持続可能性の観点から見た漁業の地位についての一般的な意識が(消費者から政府まであらゆるレベルで)不足しているので、資源に対する理解が深まるにつれて、漁業改善の取り組みに対する需要は高まってくるでしょう。これらの地域での漁業審査に対する需要はかなり高いですが、これは、対象地域で捕獲された魚種を購入販売するリスクを見極めたい西洋のバイヤーからの圧力によるものです。

漁業改善組織はこういったニーズにどのように対応していきますか?

漁業改善サービスに対する需要は、まだ初期段階ですが急速に高まっています。現在、およそ10の組織がグローバル規模で体系化された改善プロジェクトの実施に取り組んでいます。一方で世界ではおよそ2500もの漁業が一定レベルの改善を必要としています。改善への努力を支援する動機は事例ごとに異なります。漁業関係者の場合は、自分で取り組めるツール(テンプレートやガイダンス)が利用できますが、競争圧力がかかるため、市場競争の前段階で利害関係者を集めて、全体で改善努力をする能力を身に着けることは容易ではありません。漁業改善に従事する組織は、営利目的の事業者と関わっていることや、投資利益率を基に決定が下されることも忘れてはなりません。また、漁業改善サービスやサポート費用を支払う予定の事業者は、それがいかに会社や顧客および収益にプラスになるか理解することが肝心です。この取り組みの恩恵を明確にできれば漁業改善は急速に進展します。しかし、問題なのはほとんどの場合、答えが存在しないことです。ですから私たちは創造力と能力を活用して参加者に何らかのバリュー・モデルを示さなければなりません。いかに漁業に関わってもらえるかは、どのくらいの価値を示せるかにかかっています。漁業改善サービスに対する需要が今後数年の間に高まってくれば、改善した漁業資源の価値をさらに示すことができるので、多少はサービスを売り込みやすくなるでしょう。どんなに小さい成功事例でも文書にして、私たちの取り組みが有効であることを示すことが肝心です。

他にどのような思いがありますか?

この取り組みをさらに進化させて、自分たちの仕事や他者の仕事ぶりから学ばなければ、私たちの現在の地位を今後も維持することは難しくなるでしょう。漁業改善活動においては、小さな勝利を祝い、漁業改善のためのどのような努力も無駄にはならないと考えるべきです。ほとんどの場合、この取り組みは持続可能な資源に対する理解度が低い、きわめて難しい地域で行われるため、忍耐と期待値管理がカギになります。2-3年後をめどに成功できれば、環境コミュニティーからはその取り組みのモデルが有効であると認識されます。私ができる最良のアドバイスは、積極的にしかし慎重に前に進んでいくことです。新しいクライアントに対しては頭を使い戦略的に関わっていく必要がありますが、いったんリスクとリターンを計算したら、限界を超え果敢に挑戦することを恐れるべきではありません。

*ディック・ジョーンズ氏はオーシャン・アウトカムズの事務局長で水産物産業のコンサルティング会社Resiliensea Group, Inc.の創始者です。